単純さと美しさ

カタかたり

形稽古の中で私たちが追求していく所作は
まず差し当たっては
無駄を排し
すべきことを単純に行うことにある

余計なことがそぎ落とされた
もっともシンプルで純粋なる所作

そこに美しさが顕れる条件の一つが整う

美しさとは
うつ・くし
うつとは空虚なさまでありすなわち無駄のない様
くしとは珍しいこと不思議な様

つまり
動作における美しさとは何かをなすことではなく
何をしないのかの意志なのであり
さらにそれがぎらつくようではダメなのである

何を見せるのかではなく
何を見せないのかなのだ

確か茶道でこんな話があったと記憶している
千利休が弟子に茶会の前に茶室の周りをきれいにするように言いつけた
弟子が一通り掃除を終え千利休に報告する
そこで千利休が見に来て弟子にまだきれいになっていないと言う
弟子は再度掃除をするがそれでも千利休はまだできていないと言う
さすがに弟子は納得いかずどこがダメなのかと言い寄ると
千利休がそこに生えていた木を揺らして落ち葉を散らした
というようなものがあったと思う
余計なものを排除するだけでは美しくはない
無駄を排したということの痕跡もまた消すことこそが美しさなのだ

「秘すれば花」

それゆえに芸道は一道に帰すのである

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